ベンチャー企業ばかりを渡り歩いてきた私にとって、この「実力主義」による評価制度には、恩恵を受けてきた社員かもしれない。
私自身、数は多くないが、1,000人以上の企業でのデザイン業務も経験し、ベンチャーと大企業の両方をの違いを述べるには、経験が浅いかもしれない。
そんな社会経験の中で、少し気になっている点について考えてみたい。
大企業でも、ベンチャー企業でも、メンバー(平社員)を取りまとめる「マネージャー」もしくは「部門長」がいる。このクラスの人たちの評価が、現在の日本では正当に行われているのか?
ちょっと私には疑問が残る。
従業員の人数が増えるにつれ、取締役や執行役と言った職位の人間が、複数人のマネージメントを行うことは、当然、難しいことである。
1,000名以上の組織になると、部門という“かたまり”を、まずは作り出す。「マーケティング部」「営業部」「開発部」などと、それぞれの専門を集めて、かたまり(グループ)を作る。これは、会社組織でなくとも、
妥当な形態であると思われる。また、部門長は、部下(メンバー)のマネージメントをする。企業によって、異なると思われるが、業務の執行、人事評価など、いわば、給与の査定を部門長は行う。
現在の日本は、海外企業ほどではないが、「実力のある者」が上層部から高評価をもらう。それによって、給与が上がったり、職位が変わる。
私は、この「評価」というのは、果たして、アイディアを出し、直接売り上げに貢献したメンバーが高評価を受ける企業をよく目にしてきた。考えてみれば、当然のこと。企画を立案し、実行したメンバー本人が、他のメンバーよりも高評価であるのに疑いはない。私が気になるのは、そのメンバーを取りまとめる「マネージャー層」の評価基準である。
端的に言うと、私の考える基準は、自ら企画して売り上げに貢献したメンバークラスの従業員が、評価(昇給)を独り占めするべきではないと思う。
「組織はチーム」である。マネージャーは、その部下の査定をする。経営層はマネージャークラスの査定をする。この査定に「マネージャーの査定」が曖昧であり、理にかなっていない制度であると思えて仕方がない。
多くのメンバーが、まず、上長であるマネージャーにプレゼンなどをし、そのメンバーの案をマネージャーがジャッチする。そして、経営層に対して、この「〇〇さんが立案した企画」をプレゼンなどで伝える。
OKが出れば、実際に予算をもらって、実行する。そして、その結果を上層部、マネージャー、他の社員が知ることになる。
そして、結果、売り上げ等による会社へ貢献した「結果」が、立案した一人のメンバーの査定・評価になる。
好成績を残せば、そのメンバーひとりに高評価がされる。これが実力主義による評価制度であると考えている。
では、メンバーの一人が、部門長(マネージャー)に企画を提出して、「ノー」と言われた場合、評価はどうなるだろうか?
もし、その企画が、実行されていれば、大きく会社に貢献できたとしたら?
ここに部門長の「判断」という大きなポイントがある。今の社会では、実力がある者が出世し、部門長、執行役員、取締役と言った感じで職位を上げていく。当然、給与も上がる。
では、その際の部門長(マネージャー)の評価はどうなるのだろうか?
俗に言う“管理職”というのは、部下が成果を出しても、会社側からは過小評価されていると私は思えて仕方がない。特に、大企業といった組織の中でだ。
結論として、成果を出したメンバーと同等の評価を、部門長(マネージャー)も受けるべきだと思う。その部下が提示してきた企画を、上層部へ「伝えた」という事だけに高評価があって必然ではないだろうか?
昔の日本的企業は、年功序列であり、出る杭は打たれると言われるように、優秀なメンバーが、とんでもない高評価を個人として受けてしまうと、その部門長は、自分の立場が危ういと感じる。だから、良い企画でも、メンバーが提案してきたものは、採用しない。つまり、上層部に伝わらない。これは本当に悲しくなる人間の性が邪魔をしている。
私は、その部下の業績を評価するのは当然のこと、そのような部下が高評価を出せた部門長の高いマネージメント能力に対しても、部下同様の評価と査定がされてこそ、当然であり 、そうあるべきだと考える。
現在は、大企業でも、「00部長」と呼ばずに、「00さん」という「さん」で呼ぶように、会社側から通達がでている。それに加え、フラットな社風を推進しているし、実際にそういう企業が非常に多くなっている。
ここ数年で立ち上がったベンチャー企業では、このフラットな社風は、当然のごとく実現されている。しかしながら、メガベンチャーと呼ばれるような、大企業と肩を並べるようなベンチャー企業でも、この部門長と部下の評価基準は、古き日本的な評価制度であると思っている。
自分の立場を守りたい長、自分の意見を伝えたい部下。この2つのレイヤー層が、うまく評価される制度が、私は望ましいと思えて仕方がない。