i Think

「音」について ( 2020.2 )

暑くなると、風鈴や川のせせらぎの音を聞くと、自然と心が落ち着く。
何故なのだろうか?
人間には五感があり、音は聴覚。つまり、五感のうちの1つでしかない。しかし、音を聞く事で残りの四感も、同時に感じることってあるのだろうか?

そもそも人間にとって「聴覚」という機能(?)は、どれだけの情報を脳に与え、何を生み出しているのだろう。
最近、金魚鉢を購入した。その金魚鉢には、モーターで水を汲み上げ、濾過した水をもとの水槽に流す。この水槽に流す際に、水の落ちる音が聞こえる。まるで川のせせらぎのような音。
忙しく一人で部屋にいると、その音が聞こえると「何だかうるさいな」と思う。しかし、一度忙しさもおさまると、今度は心地よい音に聞こえる。ただし、ここに不思議がある。

前述の音の聞きく側の気持ちの姿勢が、ポイントではないかと思う。
人間が音を聞くとき、大きく分けて2パターンある(?)。1つは「自分から音を聞きに行く、もしくは探す」という行為。もう一つは「無意識のうちに聞いている音」。忙しい時は、何もかもが気になる。少なくても私はそうだ。気持ちの落ち着いている時は、心地よい音であるはずが、同じ音でも忙しい時は邪魔な音である。後者は、気持ちが落ち着いている時に聞く姿勢。テレビや読書などでリラックスしている時、水の流れる音は、まったく邪魔ではない。むしろ心地よい。いや、心地よいと感じる事なく、聞こえているはず。なぜなら、無意識であるから。前者のように、自分から聞きに行く姿勢をとると、音を聞いていることは認識している。当然のことだ。しかし、後者は、自分から音を探していない。でも、間違いなく音は発生しているのだ。

人間は、普段と違う事があると、敏感に反応する。これはデザインでも応用できる認知学というものらしい。アクション映画なども、突然、銃声が聞こえると、ドキッと反応する。しかし、無意識に聞いている水の音は、きっと日常の音だと、自分が認知しているのだろう。だから、気にならないのかもしれない。とはいえ、無意識で聞こえる水の音って、体、もしくは脳は、その音にどう反応し、どのような事を与えているのだろうか?

多くのデザイナーは、デザインにリズムを取り入れている。
単調な形で描かれたデザインだけでなく、そこに僅かな「ズレ」を付加している。これにより、リズムが生まれ、見るものに「普段とは違う」感覚を与えているのだ。これがグラフィックデザイナーの手法のひとつ。

美術学部では、このリズムについて、しつこいくらい指摘されてる。
お前のデザインにはリズムがないと。でも、なかなか簡単に身につく技術ではない。

実務でも、うまく出来ないときもある。大抵うまく出来ない時は、「何かが足りない」と思う時が多い。そして原因を探す。答えが見つけられてリズムが加われば、良い作品となる。

これはロジックでは身につかない。残念ながらセンスと経験が必要だと。

話は逸れたが、この意識的、無意識的という2つの環境をうまく取り入れることにより、何か新しい作品(サービス)が出来そうな気がする。
人間の心は常に防御されている。大きな声で怒鳴り声が聞こえれば、ビクッとするし、工事現場のドリルの音を騒音と認識し、音を聞きたくない姿勢(反応)をする。では、無意識の音は?
これがまだわからない。無意識に人に何かを伝えること。つまり、人の防御をとかせること。この環境を与えることにより、多くの情報を人の心に届かせるのかもしれない。それは無防御の状態だから。