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「クルマの価格」について ( 2020.4 )

世界的なのか、それとも日本国内、もしくは日本車だけなのかは分からないが、とにかくクルマの価格が高い。
特に、新車の価格が上がっているような気がするのは自分だけだろうか?

何が価格を上昇させているのだろうか?

雑誌やWebサイトで見る限り、「税金が高い」、「維持費がかかる」などのコメントを目にする。このままでは、外車と同レベルの価格になってしまう。
外車が高いのは、その製造の思想が違う。 特に、日本では高級車で知られるドイツ車やイタリア車などは、根本的に「良いものを作ろう」という意識が原点にある。別に日本メーカーがそういう意気込みがないという訳ではない。
以前、職場の人に聞いたことだが、日本メーカーの商品企画は、まず、損をしないこと。そして、売れる見込みと売れなかった時のリスク回避を考えるらしい。でも、当たり前のことだ。物を売って損をするなんて本末転倒。そのため、商品開発の担当者は、緻密な売上予測などを考慮して、企画を上司(役員かな?)に提出する。受け取った上司は、まず、損益にならないかどうかをチェック。そのあと、クルマのコンセプトなどを読み込んでいくとのこと。
Webサイト制作会社でも、日本では当たり前。収支が合わないのに、受注するなどとは、特別な理由がない限り、上層部には言い訳でない。そんな案件は受注するなって言われる。ごもっとも。

但し、海外企業を見てみよう。クルマに限っての話ではあるが、海外の自動車メーカーでは、良いものは採用する。まずはこれ。
自分たちが「このスイッチは、メッキではなく、アルミ素材をそのまま使おう」など、「良いと思ったこと」は、実行し、それを上層部は同じ意識で認める。つまり、良いものををどんどん採用していって、必然的に価格が上がるのである。これは、開発途中でも、変更されることがあるらしい。当初は予定似なかった部品の交換を。
だから良いクルマが作れるのであろう。

日本メーカーでは、価格を考慮せず開発が進められないのであろうか?もしくはそうした過去はないだろうか?

一つだけ私は知っている。それは「初代プリウス」。

販売された時、「未来のクルマが!遂に電気での走行が実現!」と私もびっくりした事を覚えている。
でも、あの時、トヨタ自動車の社長が言っていた言葉がある。それは「売れるだけ損をする」。
当時、画期的なクルマであったプリウスは、開発に相当な投資をしていた。例のないクルマ作りをした。

プリウスの前には、セルシオ(米ではレクサス)も、トヨタの高度な技術を余すとこなく注ぎ込んだクルマであった。しかし、こちらは、その技術と性能に比例して、クルマの価格も高かった。しかし、プリウスは、あえて高くしなかった。
政府の助成金という後押しもあったが、当時で200万円台で買えるなんて、トヨタは相当頑張った。
でも、それだけの損をしても、今後、電気自動車の時代が訪れた時に、トップランナーとしてのブランドが生まれると思ったのだろう。これは長期的なマーケティング計画でもあった。そして、実際にトヨタはそうなった。

昨今のクルマ価格の高騰は、その先行投資を。購入者に負担させているからではないかと、私は思っている。

端的に言えば、新しいクルマを設計するための投資が、クルマ価格の高騰に繋がっているように思う。
今では、電気だけで60〜100キロくらい走行が可能な車種も出てきている。いままで、内燃機関で築いてきたエンジン技術が、コロっと電気(モーター)に変わる。これは製造メーカーにとって、作る工程も変わるため、既存の工場を新しいレーンにするための投資だけでも、相当な額になる。

加えて、もう一つの要因は、「バッテリー」だと思う。どの自動車メーカーも、自社でバッテリーは製造していない。今までのバッテリーとは違う。 必然的に、バッテリーは他社から購入し、クルマに搭載する。このバッテリーが、まだまだ高価なのだ。バッテリーの性能も日進月歩で技術開発が行われている。バッテリーメーカー(多分、Panasonicとかだろう)も、高い投資をして製造している「最中」なのだ。
私は。このバッテリーが、普及することで価格が落ち着くと思う。でも、まだまだ先のような気がする。なぜなら、現状のバッテリー性能もまだまだ向上させる必要があり、バッテリーメーカーは、現在でも開発に投資している真っ最中であろう。

バッテリー価格が落ち着けば、クルマの価格上昇を止まるだろう。落ち着いて、価格が下がるのかというと、ちょっと疑問ではあるが。

プリウスを販売し、損を覚悟で販売したトヨタ自動車は、本当にすごいと思う。まあ、資本が潤沢であるトヨタだからこそ出来たのかもしれない。

ただ、プリウスだけでなく、他の車種にもハイブリット、電気モーターを用いているトヨタだが、株の時価総額では、遂にアメリカ「テスラ社」に抜かれてしまった。
テスラは、電気自動車を作る事で創業された新興メーカー。
価格が上昇している事は、とても残念だが、電気自動車の普及を待てばいい。それまでは、ハイブリッド車、今まで通り内燃機関車を購入するのがベストだろう。また、騒音規制や燃費規制などもあり、昔の名車、名機が開発中止になっている。なので、今でなければ乗れないクルマを、中古で購入するのも良いだろう。

さて、トヨタはテスラに勝てるだろうか?