Word collection|Aphorism(格言)


“夢っていうのは、叶わないから夢なんだよ”

今でも頭から離れない友人の言葉。19歳の時、私はまともな人間ではなかったと思う。(今でもそうかもしれないが...)
将来、自分はしっかりとした人間になれるのか不安だった頃。

そんな時に居酒屋でその友人から「お前、何やりたいんだ?」と問われた。
私の頭の中で、真っ先に思い浮かべようとした事は、現実的になれる目的であった。突拍子もない、非現実的な言葉ではなく、相手に納得してもらう言葉を無意識に探していた。
ちょうど、デザイン学校で学んでいたこともあり、「デザイナーになりたい」と私は答えた。
しかし、友人からの答えは、

「それって、今やっていることだろう?デザイナーになるのは。俺が聞いているのは将来の夢だよ」

と言われた。確かにそうだと思った。何だか自分が恥ずかしくなった。
私が学んでいたデザインは、あくまでも静止画。1枚の広告ポスターで、如何にコンセプトを見る者に、納得させるかを勉強していた。
今のようにパソコンもなく、アナログな制作手法が一般的。
しかし、私はその表現力に限界があるのではないか、という疑問を常に持っていた。「絵は音を連想し、音は絵を連想させる」。この言葉は、今でも制作時に意識していること。

その頃、私はデヴィット・ボウイのアート活動に魅せられていた。(今でもそうだけど)
ボウイは、まさに映像と音の魔術師だと思う。
MTVというミュージシャンが曲に映像をプラスするプロモーションは、ボウイは先駆者だと思う。後に、マイケルジャクソンのスリラーなど、多くのミュージシャンが作成に力を入れたのは、ちょうど80年代後半くらいからだ。

少し話は逸れたが、当時の私は、ポスターやサインといったグラフィック手法ではなく、動く絵(動画)と音の組み合わせた広告に強い関心を持っていた。デジタルサイネージは当然、一般化していない時期だった 。
今では当たり前のように日常生活に溶け込んでいるが...。
「一つのコンセプトを伝えるには、そのコンセプトの対しての“世界観”を作り出し、その環境の中へユーザーを誘い込むことが、効果的なコミュニケーションデザインだと思っていた。私は友人に、「映画を撮りたい」と答えた。
その友人は、ニッコリと笑いながら、

「おぉそうか、夢っていうのは、叶わないから夢なんだよ。夢を見るのをやめたら、自分が確実にできる事しか考えなくなるからな。応援するよ」

19歳の私にとって、その一言が私の胸を突き刺すようでした。友人からの問い(身近な名言)でした。